トイレ掃除で「フチの裏に汚れが溜まって落としづらい…」と感じたことはありませんか?その手間を減らせる選択肢として注目されるフチレス(フチなし)トイレについて、その誕生の背景や普及の理由をわかりやすくまとめました。また、現代普及しているフチレス(フチなし)トイレの問題点についても触れておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
今や普及型となったフチレス形状
昔のトイレに「フチ」が必要だった理由
昔のトイレ(洗い落とし式やサイホン式)は、上から下に水をドバドバと落とすだけの構造でした。 このとき、もしフチがないと勢いよく落ちてきた水が便器の外に飛び出してしまいます。
そのため、当時のフチは以下の2つの役割を持っていました。
・水が外に飛び出さないための「堤防」
・水を便器全体にまんべんなく行き渡らせるための「導水路(水の通り道)」
フチの裏側に小さな穴がたくさん空いていて、そこからシャワーのように水が出てくるタイプを覚えている方も多いのではないでしょうか?あの穴から水を出すために、どうしても空洞のある「フチ」が必要だったのです。
フチレス(フチなし)トイレは悲願だった
洋式トイレが広まった当時、トイレ掃除の不満アンケートでダントツの1位だった「フチ裏の掃除」。
企業は改良を重ね、フチレス(フチなし)トイレの開発に成功しました。
世界で初めて本格的なフチのないトイレ(トルネード洗浄)を開発したのはTOTOで、なんと2002年のこと。
その後、LIXILやパナソニックなども独自の流し方を開発し追随したことで、2010年代以降、日本のトイレのスタンダードとして定着していきました。
なぜフチを無くすことができたのか?
技術の進化により、上から水を落とすのではなく、「横から渦を巻くように水を流す技術(旋回流・トルネード洗浄など)」が開発されました。
これにより、状況が一変します。
遠心力で洗えるようになった
水がぐるぐると渦を巻いて便器の斜面を滑り降りるため、上からの「堤防」がなくても水が外に飛び跳ねなくなりました。
LIXIL パワーストリーム洗浄
水の通り道(フチの空洞)が不要になった
1〜2箇所の大きな吐水口から勢いよく水を噴出させるため、フチの裏に細い水の通り道を作る必要がなくなりました。
さらに、便器の表面をツルツルにするナノレベルのガラスコーティング技術(LIXILのアクアセラミックやTOTOのセフィオンテクトなど)が進化したことで、「激しい水流でなくても、少ない水でツルンと汚れが落ちる」ようになったことも、フチなし化を大きく後押ししました。
フチ裏の汚れの問題は解消できたが……
フチをなくしたことで、フチ裏の掃除からは解放されました。しかしそれは、汚れが消えたわけではなく、「汚れの付着する場所が移動しただけ」だったのです。
かつて便器の「フチ」は、水流や排泄物が外へ飛び出すのを防ぐ物理的な堤防(ガード)の役割を果たしていました。その堤防が撤去された結果、以下のような新たな問題が発生してしまいました。
便座裏へのダイレクトなハネ汚れ
男性が座って用を足す際や、勢いよく水が流れる際、遮るものがなくなったことで、便器と便座のわずかな隙間から尿や水滴がハネ上がり、便座の裏側が汚れるようになりました。
フチ裏の黒ずみは見えなくなりましたが、代わりに「便座を上げるたびに、ダイレクトにハネ汚れが目に入る」という別のストレスを生んでしまいました。
便器の外(床や壁)への伝い漏れ・飛び散り
ガードを失った水滴や尿は、便座の裏を伝ってそのまま便器の外側へ流れ落ちたり、床へ飛び散ったりすることも。結果として、トイレの「中」だけでなく「外側」の掃除頻度が増えてしまったという声もありました。
改良を重ね、汚れは飛びにくくなった
「フチをなくしたら、便座裏や外に汚れが飛ぶようになった」というユーザーの不満に対し、各トイレメーカーは技術の粋を集めて改良を重ねてきました。現在では、単にフチを削るだけでなく、便器そのものの形状や水の流し方を変更したり、「汚れを外に出さないためのハイテク機能」を導入しています。
泡クッションの登場
パナソニックの「アラウーノ」などに代表される機能です。用を足す前に、便器の水たまり面に自動で細かな「泡のクッション」を敷き詰めます。この泡がクッションの役割を果たし、男性の立ち小便によるハネや、座ったときの衝撃を物理的に吸収して、便座裏や外への飛び散りを根本からシャットアウトします。
しかし泡があると便や尿の状態を確認しづらいと言った声もあり、更なる改良を企業は続けています。
フチありのトイレは存在する?
すべてのメーカーがフチレス(フチなし)一択にしたわけではなく、フチありのトイレをラインナップに残すメーカーも存在します。
TOTO「ピュアレストQR」
TOTOの上位機種(ピュアレストEXなど)は完全にフチがゼロのフラット形状ですが、この「QR」というモデルは、あえてフチ裏のくぼみを「浅く」して残した形状になっています。フチが完全にフラットではないため、水ハネや尿の飛び出しをブロックする「堤防」としての役割をある程度果たしてくれます。※バージョンアップにより、形状が変更になる可能性があります。購入前にはショールーム等で実際の製品をご確認ください。
TOTOパブリックコンパクト便器
TOTOの業務用便器の中にはあえてフチを残したモデルがあります。しかし一般の方がこちらを購入するのは難しいため、ピュアレストQRの検討をおすすめします。
Panasonic アラウーノ
Panasonicのタンクレストイレ「アラウーノ」は、あえて便器にフチを作ることで用を足しても飛び出しにくい形状にしています。
フチも大きく作ることで指が回るようになっており、汚れがふきとりやすくなっています。
まとめ
トイレ掃除の最大の敵だったフチ裏の汚れを解消するために生まれた「フチレス(フチなし)トイレ」。それは日本のモノづくりの執念と、目覚ましい技術革新がもたらした一つの完成形と言えます。
しかし、「フチがなくなったこと」が、すべての人にとって100点満点の正解とは限りません。 フチという堤防を失ったことで便座裏のハネ汚れに悩まされるケースもあります。
物理的なフチをわずかに残した「ピュアレストQR」を選ぶのか、あるいは「アラウーノ」のようにあえて便器にフチを作った商品を選ぶのか。納得のいくトイレ選びをしてみてくださいね。